P--1427 P--1428 P--1429 #1一枚起請文    一枚起請文                            源空述  もろこし(中国)・わが朝に、もろもろの智者達の沙汰しまうさるる観念の念 にもあらず。また、学文をして念の心を悟りて申す念仏にもあらず。ただ往生 極楽のためには南無阿弥陀仏と申して、疑なく往生するぞと思ひとりて申す ほかには別の子細候はず。ただし三心・四修と申すことの候ふは、みな決定し て南無阿弥陀仏にて往生するぞと思ふうちに籠り候ふなり。このほかにおくふ かきことを存ぜば、二尊のあはれみにはづれ、本願にもれ候ふべし。念仏を信 ぜん人は、たとひ一代の法をよくよく学すとも、一文不知の愚鈍の身になし て、尼入道の無智のともがらにおなじくして、智者のふるまひをせずして、た だ一向に念仏すべし。 [為証以両手印] [浄土宗の安心・起行、この一紙に至極せり。源空が所存、このほかにまつたく別義を P--1430 存ぜず。滅後の邪義をふせがんがために、所存を記しをはりぬ。]   [建暦二年正月二十三日]                             [源空](花押)